Systematically Unsystematic

考えたことの置き場所

解くべき問題を定義する

今の会社に移ってから自分のスキルセットや考え方にアップデートが必要だと感じはじめた。

1つには所属する会社が大きくなった。これまでは小回りの利く組織で立ち上げ屋のような役回りでいたのが、立ち上げたものをスケールさせるのが課題となった。小回りが利きづらい組織をどう動かすか、誰かを説得するという作業が重要となることから、戦略や目標設定の重要性について認識を改める必要があった。

自分自身を振り返ってみると、これまで一貫して解くべき問題の正体を見極めることを重視してきた。ざっくり分けるとよく定義された問題を厳密に解くか、それとも粗く定義された問題をスピーディーに解くかという切り口になる。

一方で、解くべき課題の発見や定義からはじめた経験はそれなりにあると思っていたが、じゃあそれは100のうち幾つか。素直に振り返ってみればそんなに多くない。

 解くべき問題と、その価値のない問題の区別はどのようにつけるのか。精度をどのように上げるのか。もちろん本を読んで向上するものでもないので、実戦のなかで習熟していくしかない。少しでもスピードを上げるには普段から意識しておくしかない。

ただ、意識しておけば良いのなら「意識高い系」という言葉もない。

仕方がないので他の人のことを観察することにした。自分自身より他人の方がよく見えるからだ。価値のある仕事をしている人、曖昧なアウトプットしか出てこない人、何かやっている風だが定型的なもの以外は出てこない人、よく考えているが十分に表現できていない人。

いずれの場合も、自分にもそれをもたらす要素は持っている。問題はそれに自覚的かどうかで、自分の状況をなるべく正確に把握して行動することが肝心ということになる。

アイデアの価値

「アイデアなんかに価値はないよ」という人がいる。

たいていの場合、こういう発言をする人の念頭にあるのは実現性を考慮していない思いつきのことで、確かにそれには価値がない。

ただ、こういう発言が価値を持つのもそんなに長くはないだろう。アイデアというのは思いつきレベルですら出ない人が結構いるし、有効なものを出そう(というよりは、磨き上げていこう)とすると知識や経験の蓄積が必要で、加えてある種の思考の訓練も必要となる。

イデアそれ自体には値札をつけるのは難しくても、アイデアを出し、検証し、形にし、スケールさせていくためのプロセスや体制には値段がつく。それなりに時間も知的リソースもかかる。

 個人としてあるいは組織として、アイデアを自分のために保持しておけることが重要なのだと思う。といっても森林の保水力のようなもので、ダムを築いて水を塞きとめるようなものではない。

 

怪我の効能

太らないようにとランニングを始めて10年ほどになる。東京マラソンに当選してしまったときは練習もこなして42.195キロを完走してもいるが、当選しない限りは10キロ走るぐらいがせいぜいのレベルである。

その割には故障が多い。最後にフルに出たのは6年前で、もっとタイムを縮めたいと思いながら仕事が忙しくなったり家庭の事情が許さず、宿題を済ませないままでいる気持ち悪さから短期間で自分を追い込むトレーニングを行っては故障を起こしてというのを繰り返してきた。

正しく追い込んでいるわけではなく、たんに無茶をしているだけだったと思う。元々それほど頑丈な身体ではない。過去にあちこちの靭帯を切ったり伸ばしたりしたせいで左右のバランスが悪く、疲れが溜まるとすぐに腰や背中などに影響が出る。頚椎捻挫に至ったこともある。

今年は身体の裏側の筋肉を鍛えようと思っていたところ、蓄積した疲労が股関節の痛みとして顔を出してきた。

マッサージにいってほぐしてもらい、揉み返しがきたら馴染ませるために軽めに運動してくださいと言われた通りに軽めにジョギングをしていると色々な人に追い抜かれる。追い抜けそうな人にも追いつけない。痛いのだから仕方ないと思ってそのまま続けていると、別にこれでいいじゃないかと思えてきた。

毒気が抜けたというか、誰に頼まれたわけでもないのにやたらと速く長く走ろうとしていたことに気づいた。

気楽にやればいいのに、習慣より強く根っこを張っていた妙なこだわり、偏執に気付かず、同じ行動を繰り返してしまっていた。分かっているつもりでも、なかなか自分で自分のことは気づかない。

6月

気がついたら6月になっていた。夏を思わせる気温の上がり方と、まだ甘いがうっすらとした湿度の高まりがその前の梅雨を思い出させて来る。6月終わりの心地よくはない疲労も一緒に戻ってくることになる。

 

ある種の女性

ブラック的な会社のあとはベンチャーにいた。ネット業界のスタートアップで上市でイグジットな感じではなく、地味な業界のなかで上手く差別化する方策を定めて立ち上げた会社だった。

そのはずが、社長に妙な神通力がつき予定外に会社は急成長し、その反動なのか元々見栄っ張りの気の強かった社長は躁鬱と人間不信を患い、色々な人がやってきては社長と衝突したり失望されてりして去っていった。

在籍期間はともあれ誠実に仕事をしていた人は多少の爪痕を残していたが、時折何もなくただ消えるという人がいて、だいたいは過去にどこかの偉い人の秘書とかアシスタント的な業務をやっていた、オッサンの扱いには長けている元美人。

偉い人の仕事を側で見て疑似体験しているものの、組織を、人を動かすための基礎的な要件は備わっていない。甘やかされたせいなのか自分の仕事のアウトプットを省みる習慣もない。耳年増な正論とどこぞの誰かのエピソードを振り回してあれやこれやと人に要求はするが、スープを飲むのにフォークを振りわましているようなもので、何も起きようがない。

そういう人が自分の在籍期間中4-5人はいた。オッサンの扱いになれているので「彼女に協力してあげてよ」というコメントは引き出せるし、それもあってはじめは何となく協力していた人たちも、おかしさに気付いてくる。

時間が経つにつれて周囲は面従腹背になり最後の仕上げの部分で手を抜き始める。それに気がついて自分で仕事を完成させたり指摘できるなら良いが、その能力はない。みすぼらしい地金が出る瞬間がやってくる。

この手の女性がメディアを賑わすことが多いが、雰囲気ですぐにそれとわかるようになっているのは、良いのか悪いのか。自分がオッサンになったときに見分けられる感覚はもっていたい。

ブラック企業に勤めていた頃のこと

初めて勤めた会社は今でいうブラックだった。

法人ではあるが個人事業に毛の生えた程度の事業規模であり、社長は会社を大きくするよりも小さな会社を複数作って仕事を融通しあうことで何らかの旨味を得ていたようだった。

社内にあったソフトの多くは違法コピーで、社内のサーバはそこら辺でエンジニアが買ってきたタワー型PC。これがしょっちゅう止まっては再起動していた。いつ止まるか分からないので、大きめのファイルを保管するときは声をかけあって人力でロードバランシングしていた。

大手企業からの仕事を受けていたからだろう、そんな会社に外資ITや銀行にいた人が社員として勤めていた。他の社員も国立大卒や慶応卒がいたりで人生を無駄遣いしている感があったのだが、それぞれに理由なり目的があったのだろう。目的よりは理由があったのだろう。当時は氷河期ど真ん中だった。自分もまたそこにいる理由があった。

あるとき給与の遅配があり、程なくして会社が解散するというのでお役御免になった。こちらも勝手にしろということで、残りの給与は振り込んでおけという連絡をして退職した。

今思えば最後の給与は振り込まれていたので、それなりに誠意はあったのかも知れない。ただ社会保険が支払われていなかったのは後日知った。

生涯学習と働き方改革

最近は大学でもう一度学ぶことが多い。MBAやMOTを取りにいくのも考えたし、Courseraのようにオンラインで特定分野に絞って学習していくことも選択肢としてある。

特に後者のようなMOOCは認知度も上がってきている。この背景には、米国企業が経営に心理学やネットワーク理論などのサイエンスを取り込んできたことや、データサイエンスのような複数の専門性にまたがる分野を実践するためにはアカデミックに優位性のある場面があることが理由としてあるようだ。

それがあってかは分からないが、今いる会社では2つのコースをCourseraで履修させてもらっている。業務に関係する内容なので見知ったことも多いものの、単純に楽しいし、知ったつもりの内容の意外な盲点を発見できて良い振り返りにもなる。

自分を含めていまの日本の現役世代は年金を前提にした人生計画は立てられない。もちろん本当に強固な(盤石とは言わない)基盤を築いている会社もあって、企業年金が出るケースもあるかも知れないが、まあ殆どの人は自衛が肝心。

一方、世の中の変化の速さを考えると、自分で自分の知識を更新していかないと会社が傾いたときに急に食い詰めるようなことになりかねない。

だからポータブルスキルを身につけられない環境からは出るべきだとか、転職屋のようなことは言わない。学習する内容から自分が手がける仕事まで、より戦略的に取り組む必要があるということだ。

長寿化、引退年齢の後退、再学習の必要性とくると文字通りの意味での生涯学習が必要になるのだろうと思う。今は老後の暇つぶしのような位置づけになっているが。

そして、いま話題の働き方改革なども、効率化することで再学習のための時間を確保すること(あるいは育児や介護などの時間を捻出すること。こっちが本音か)が本来の目的としてあるだろう。ただ、これには前提条件があって、そこを政府のお偉いさんが認識しているのかは謎である。